「ビールの縁側」ばなし
栃木マイクロブルワリー(栃木県)
のはなし

ビール造り25年、レシピ総数1000以上。
「おもしろいビール」って言われるとうれしいかな。

栃木マイクロブルワリー(栃木県)
横須賀 貞夫
栃木県宇都宮市

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栃木県宇都宮市。
栃木県のほぼ中央に位置する県庁所在地で、東京まで新幹線で50分というアクセスの良さと、都会すぎない住みやすい街として人気の都市です。北関東最大の都市でありながらも、市街地を離れるとのどかな田園風景が広がり、広大な農地と恵まれた気候によってバラエティに富んだ農産物に恵まれています。2008年、宇都宮市街地にオープンしたのが「栃木マイクロブルワリー」。100Lという最小規模のタンクで造られる多彩なビールとともに、多くの醸造家を育ててきた代表でブルワーの横須賀貞夫さんにお話を聞きました。

今まで使ったことがあるもの? スーパーにある農作物全部(笑)

30歳でビールの世界に飛び込んで独立まで10年間ですね。醸造技術だけではなく会社の立ち上げから経営、販売や人脈も築き上げて2006年に独立を決めたんです。

醸造家として25年になりますが、その前はレコード・CDショップ。遡れば仕事始めは22歳で家業の電気屋でした。全然違う業界でしょう(笑)。誰かがつくったものを売ることより、自分で何かをつくって直接お客さんに売る仕事がしたかったんです。できれば嗜好性の高いお酒がいい。でも県内にたくさんある日本酒の酒蔵ではおもしろみがないし、ウイスキーは時間も資本もかかる。ワインはブドウの栽培から考えると難しい。そこに1994年の酒税法の規制緩和があったんです。これによって、今まで大手でしか造れなかったビールが中小企業でも造れるようになったので決めました。これからどんどん裾野が広がっていく、ビールなら自分も参入できる分野だと。

まずは栃木のビールメーカーで経験を積みたいと思って、1996年に立ち上げ準備中だった那須高原ビールに入社。醸造技術は国内で先陣を切って醸造を始めたエチゴビール(※1)で研修を受けて、ビール製造から営業販売、レストラン運営まで全体を指揮する仕事に就きました。3年間、工場とレストランの統括責任者として従事した後、1999年に日光ビール(※2)の立ち上げをサポートしてそのまま入社。そこで醸造以外の仕事、会社の設立から運営していく経験を一通り積んで、次のステージに移るために2006年に独立したんです。

ところが、ようやく開業する段階になったところで業界は逆風。

90年代の地ビールブームが過ぎさって冷え込んでいた時期でした。そこで経営基盤を固めるために、個人や会社相手にオリジナルビールを造る小ロットの受託製造を事業の軸にしたんです。1回の仕込み量は50L~と日本最小クラスなので、結婚式やお祝いなど個人でイベント用に造るオーダービールや、飲食店やペンション、酒屋のプライベートブランドなど需要はさまざま。客足に左右されるパブ営業より、自社でお客さんをもつ酒屋や飲食店に売ってもらった方が事業は安定します。今でも生産量の9割はOEM商品ですね。

オーダービールなので、レシピの幅はとてつもなく広いんですよ。

果物や野菜、ハーブ、スパイスなら一通りのものを使ってきました。それこそスーパーで売ってるものなら全部使いましたね(笑)。あらゆる副原料を使ってきたので、醸造経験値も上がります。中でも苦戦したのは香りが強いもの、ニラやネギ、ニンニクでしょうか。強すぎる香りをコントロールするのが難しいんです。

個人のオーダーは思い入れも強いので、印象的なエピソードもたくさんあります。

二十歳になる息子さんの成人の記念としてお父様が仕込んだり、ご両親のお誕生日や結婚記念日に子供たちから贈るものだったり、卒園式後の謝恩会でふるまうビールの仕込みを幼稚園児が手伝ってくれたり。結婚式の引出物として、新郎新婦それぞれの出身地の名産品をかけ合わせたビール、というのもありました。仕込みの様子をカメラに収めて、当日のムービー演出に使って。そういった人生の節目のシーンにビールで関わることができるのはうれしいものですね。

お店で出すビールも定番を決めていません。

スタイルにも一切こだわらず、栃木県産の果物や野菜、使ってみたい素材やお客さんのリクエストを取り入れて、そのとき飲みたい、造りたいビールを造っています。だからスタイルを聞かれると困っちゃうんですよね、全部ビールだから。名前も「女医さん」や「ひのき風呂」、「ウルトラマンライト」と、味が想像できないものばかり(笑)。僕にとって大事なのは、スタイルよりもおいしいかどうか、おもしろいかどうか、好きかどうかです。これまで造ってきたレシピは1000を超えるかな?

2013年にはコンセプトを分けた姉妹店として、ブリューパブ「BLUE MAGIC」、店内併設の醸造所「宇都宮ブルワリー」をオープンしました。ここでは栃木の他のブルワリーのビールも取り扱いながら、300Lのタンクで若手ブルワーに自由に造ってもらっています。

(※1)1994年の酒税法改正による地ビール製造解禁後、国内で最初に製造開始した新潟県のビールメーカー。

(※2)1998年~2012年まで日光市にあったビールメーカー。

開業支援は最初に「月給いくらほしい?」って聞くんです。

栃木マイクロブルワリーでは、2015年から醸造家の育成や開業支援も行っています。

年々相談が増えてきたので本格的にコンサルタントに取り組むことにしました。100~200L規模であれば、個人事業としてはリスクを抑えながら始められる。クラフトビールを文化として根づかせるためには、興味を持ってくれる人、飲み手を増やして裾野を広げなければ未来はありませんからね。全国にブルワリーが増えたら、それだけビールに接する機会も自然と増えます。自分の経験を活かして、醸造家を目指す人をサポートすることが未来につながると思ったんです。

年間7~8人の研修を受け入れていて、起業まで至ったのは30件ぐらいかなぁ。

相談中や開業準備中は10件ほど。相談に来る人は本気でビール造りを考えているので意欲はあるものの、開業するまでの道のりや開業後の経営ノウハウを全く知らない状態。具体的にイメージできないんです。

だから僕は、最初に「お給料はいくらほしい?」と聞きます。

どれだけの所得を得たいかによって事業規模が決まるからです。望むだけの儲けを出すためにはどれだけの売上が必要なのか、その売上を出すための製造量や設備投資と、商売の全体像が見えてきます。さらに、長く続けるためにはビールがおいしいことは大前提として、お客さんに飽きられない工夫やブランド戦略など経営力が必須です。技術的な醸造研修に加えて、そういった経営面もトータルで相談にのっています。

巣立っていった醸造家の成長がみられるのはうれしいですよ。

「おいしいビールが造れるようになった」と言われると、やってきてよかったなぁと感じます。ここ2~3年でマイクロブルワリーの数が一気に増えましたし、2020年のコロナ禍を生き残って、来年以降も続けられるかどうかが大きな境目になるんじゃかな。

僕自身は醸造家人生25年を迎えて、今後も「おもしろいもの」を手掛けていきたいと思っています。他ではやらないこと、新しいこと、完全オリジナル路線です。使える食材はまだまだありますし、果物のブレンドもおもしろそう。お客さんに「ビールってなんだか楽しそう!」って思ってもらえたらこっちのもんです(笑)

取材・文/山口 紗佳

ありとあらゆる食材を使って、スタイルにとらわれないビールを自由に造っています。ビールの世界は自由です。あまり堅苦しいことを考えず、シンプルにビールの世界をおもしろがってくださいね。皆さまと楽しいビール文化を過ごしていきたいと思っています。

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