日本でも昔からなじみがある「ラガービール」。
昭和世代にとってビールの代名詞的な存在ですが、実はラガーにはいろいろな種類があるのをご存知でしょうか?
今回はラガーの意味からクラフトブルワリーがつくる人気のラガーまで、ラガービールの魅力をわかりやすくご紹介します。
ラガービールの“ラガー”とは?
「ラガー」とは、ドイツ語で「貯蔵」という意味で、その名の通り「貯蔵庫」で長期熟成したビールのこと。
「ラガービール」というビアスタイルがあるのではなく、下面発酵酵母を使い、長期間熟成してつくられるものは、すべて「ラガー」と呼ばれます。
日本の大手ビールメーカーにも「ラガー」の名前がついた商品がありますが、日本におけるビールの分類では「ビールの表示に関する公正競争規約」で、貯蔵工程で熟成させたビールでなければ、ラガービールと表示してはならないと定められています。
ラガーの基本情報は以下の通りです。
基本情報
発祥国 | ドイツ |
---|---|
発酵方法 | 下面発酵(ラガー) |
アルコール度数 | 5%程度 |
ビールの色合い | 澄んだ黄金色から濃色まで |
味の特徴 | 程よい苦味、爽快感、のど越しの良さ |
飲みごろ温度 | 4〜8℃ |
ラガーの発祥・歴史
ラガービールの発祥は、15世紀のドイツ南部バイエルンにあります。
まだ冷凍機が発明されていなかった中世ドイツのビールづくりは、腐敗しやすい夏を避け、秋から春にかけて行われていました。しかし厳冬期には発酵が止まり、苦労していたことも。
15世紀のバイエルンでは、凍りそうな低温でも発酵が止まらない事例が見つかり、しかも低温で貯蔵したほうがマイルドな味わいになることがわかりました。
そこで、秋の終わりにビールを仕込み、洞窟や氷室で春まで貯蔵するようになったのです。
これが「貯蔵」という意味の「ラガー」という名前の由来にもなっています。
ラガービールの種類は主に5つ
ラガータイプに分類されるビールは、細かいビアスタイルに分かれています。
日本の大手ビールメーカーに最も多い「ピルスナー」も、ラガービールのひとつです。
ドイツの技術がチェコに伝わって誕生したビアスタイルで、現在のビールの主流となっています。
アメリカの大手ビールでは、のど越しが軽く明るい色合いの「アメリカンラガー」が有名です。
流行のクラフトビールでは、IPAのラガー版「IPL(インディア・ペール・ラガー)」という新しいスタイルも誕生しています。
通常のラガービールより、ホップ由来の苦味と香りが強く、ホップの個性が存分に楽しめます。
ここではラガービールの種類について詳しく解説しているので参考にしてくださいね。
ピルスナー(Pilsner)
ピルスナービールはドイツではなく、チェコのピルゼン地区で誕生しました。
ピルスナーはホップが効いており、日本人が好きなキリッとした苦味や喉ごしの良さが特徴。
国内のビールメーカーが製造するラガービールは、ほとんどピルスナーに分類されているといっても過言ではありません。
さらに世界で飲まれているビールの約7割がピルスナーとされており、まさにラガービールの代表ともいえます。
ピルスナービールのアルコール度数は4.0〜5.0%と比較的低めです。
メルツェン(Märzen)
メルツェンはドイツミュンヘンで毎年9から10月に行われる世界最大のビールフェスタ「オクトーバーフェスト」用に、春に仕込んで秋に飲む長期熟成型のラガービールです。
通常ラガービールの熟成は数週間ですが、メルツェンは約半年以上も熟成します。
長期熟成にすることでホップの香りや苦味が弱くなりますが、喉ごしはドライで飲みやすくなり、グイグイ飲めてしまうビールに。
許可されたミュンヘンの醸造所で作られたメルツェンのみオクトーバーフェストに出店できますが、近年国内でもメルツェンを再現したビールが登場しています。
アルコール度数は5.5%と少し高めです。
ヘレス(Helles)
ヘレスという言葉はドイツ語で「淡いビール」という意味があります。
ヘレスビールはドイツ・ミュンヘンが発祥で、チェコのピルスナービールに対抗するために醸造されました。
ピルスナービールに比べて麦芽のうまみやコク、甘味があり、苦味が弱いのが特徴です。
ヘレススタイルとして有名なのが「レーベンブロイ (Löwenbräu) 」。
しかしレーベンブロイはオクトーバーフェストの中でも低い評価を受けています。
ただライトな飲み口でキレがあるため女性に人気のビールです。
アルコール度数は5.0%と標準的な数値となっています。
デュンケル(Dunkel)
デュンケルはドイツ語で「暗い」という意味があります。
ドイツ・ミュンヘン発祥のラガービールで、「焙煎した麦芽のフレーバーがクセになる」という方が多くいらっしゃいます。
デュンケルビールの見た目は真っ黒ではなく、濃い褐色をしているのが特徴。
見た目よりもさっぱりしており、モルトの甘味やコクも感じられるので、ビールの苦味が苦手な方でも飲みやすいビールですよ。
アルコール度数は5.0%前後。
シュヴァルツ(Schwarz)
シュヴァルツはドイツ語で「黒」という意味があります。
シュヴァルツビールはドイツ東部で初めて醸造されました。ドイツの一部地域では黒いビールをまとめて「シュヴァルツ」と呼ぶことも。
デュンケルよりも色が濃く、一見苦味のある感じですが、すっきりした味わいなのが特徴です。
香りはコーヒーやチョコレート、テイストは麦芽のほんのりローストされた香ばしさが感じられます。
軽い飲み口と、クリーミーな泡が人気。アルコール度数は4.8%とやや低めとなっています。
ラガービールとエールビールの違い
ラガービールとエールビールの大きな違いは発酵方法の違いと、それに伴う味や風味が異なることです。
上記でも少し説明しましたが、ラガービールは「下面発酵」。一方エールビールは「上面発酵」でつくられています。
ビールを発酵する方法はこのほかに「自然発酵」もありますが、私たちが普段飲む
ビールは「下面発酵」「上面発酵」がほとんどです。
発酵方法によって生じる味や風味に関しては、「ラガービールは苦味や深み」「エールビールは酸味やすっきりさ」という違いが出てきます。
ラガービールの選び方
ラガービールは日本で長く親しまれていて、日本の食文化に最も合うビールといえます。
ラガービールを選ぶならクラフトビールのラガーに注目してみませんか?
小規模醸造所では短期間でたくさんつくれるエールが主流です。
ラガーは発酵期間が長くタンクを占領するため、ラガーをつくるブルワリーはめずらしいともいわれています。
それだけにクラフトビールのラガーにはこだわりがあるのです。
使用する原料や酵母の組み合わせによって、そのブルワリーならではの味わいも感じられるはず。
また、友人や家族とワイワイ楽しめるような大きめサイズもおすすめです。
たくさんありすぎてどれにするか迷ってしまう方は、これからおすすめのラガービールをご紹介するのでぜひ参考にしてくださいね。
おすすめのラガー7選をご紹介
おすすめ①:【スワンレイクビール】こしひかり仕込み「翌日出荷可」
スワンレイクビールの『こしひかり仕込み』は、地元新潟産こしひかりを使ったラガービールです。
モルトにはないお米の軽さやドライさが特徴的。越後の名水で仕込んだビールは、大地の恵みがストレートに感じられる味わいだと人気です。
スワンレイクビールは、新潟県の白鳥の渡来地として有名な「瓢湖(ひょうこ)」の近くにある醸造所。
1997年の創業から3年で、世界でもっとも権威のある「ビール審査会ワールド・ビア・カップ」で日本初の金賞を受賞した実力派ブルワリーです。
2022年3月現在、国際審査会を含むビアコンテストで金・銀・銅合わせて151個のメダルを獲得しています。
おすすめ②:【NikkoBrewing】THE NIKKO MONKEYS PREMIUM LAGER
Nikko Brewing(ニッコーブルーイング)『THE NIKKO MONKEYS PREMIUM LAGER』は、奥日光の天然水を仕込み水として使ったプレミアムラガーです。
口当たりはモルト由来の芳醇なコクと甘みが感じられ、ザーツホップの華やかなアロマと上品な苦味が全体の調和を取ります。
何杯飲んでも飽きのこないピルスナースタイルで、おでんなどの和風おつまみとも相性抜群!ビール審査会でも受賞歴のある人気のラガーです。
栃木県日光市にあるニッコーブルーイングでは、自分たちの手で拡大培養した酵母と奥日光の水で、こだわりのビールをつくっています。
>>【NikkoBrewing】THE NIKKO MONKEYS PREMIUM LAGER
おすすめ③:【石川酒造】日野の地ビール TOYODA BEER<アンバーラガー>
日野の地ビールの『TOYODA BEER<アンバーラガー>』は、明治時代につくられていた、多摩地域最古のビールを復刻した東京都日野市の地ビールです。
琥珀色のビールは、しっかりとしたコクを持たせながらも麦芽の香りも楽しめる、喉ごしの良いラガータイプ。
ワールド・ビア・アワード2017では、アンバーラガー部門カントリーウィナーを受賞、2018年はワールドベスト・スタイルを獲得するなど、世界にも認められたラガービールです。
復刻にあたっては、当時の新聞広告にあった「獨逸醸造法」の表記から、ドイツ式のラガータイプの製法で醸造。本格的な味わいが楽しめます。
>>【石川酒造】日野の地ビール TOYODA BEER<アンバーラガー>
おすすめ④:【丹後王国ブルワリー】 マイスター
丹後王国ブルワリーの『マイスター』は、丹後コシヒカリを副原料に使用したラガービールです。
ピルスナータイプで飲みやすく、まろやかな口あたりとすっきりとしたクリアな味わい。
和食とも相性が良く、家庭料理など、普段の食事と一緒にデイリーに楽しめます。
「マイスター」という名前は、副原料であるお米の「マイ」から来ているそう。
京都府京丹後市にある丹後王国ブルワリーは、西日本最大級の道の駅・丹後王国「食のみやこ」内に醸造所を構え、ビールづくりを行なっています。
国内外のビール審査会で数々の受賞歴のある品質と、個性豊かな味わいが楽しめます。
おすすめ⑤:【いわて蔵ビール】東北魂ビール 麦酔ラガー2021
いわて蔵ビールの麦酔ラガー2021が「東北魂ビールプロジェクト」で誕生しました。
プロジェクトは今回で5回目。東北の地ビール醸造所が世界的に通用するビールづくりを目指し、ブルワーたちがそれぞれ知恵や技術を研鑽するために集結したプロジェクトです。
いわて蔵ビールといえばこれまで多くの国際大会で受賞し、国内だけではなく海外からも高い評価を得ているビールブランド。
こちらのビールは8.5%という高アルコール度数ですが、アルコール感を出さないために柚子が入っているのが特徴です。
唐揚げやステーキのお肉料理から、あっさりした白身魚のフリットまで幅広い料理に合わせやすいですよ。
甘味やコク、スッキリ感などのバランスが良く、ついつい飲み過ぎてしまうかもしれませんね。みんなで楽しめるように樽での販売となっています。
おすすめ⑥:【ふたこビール醸造所】フタコラガー
ふたこビール醸造所は、ビール工場と そこで醸造したビールを提供するパブレストラン「ブリューパブ」として二子玉川駅付近にあります。
こちらのフタコラガーは、下面発酵により低温でじっくり熟成させたビールです。モルトのうまみやホップの爽やかな香りが特徴。
後味もすっきりしており、料理と共にグイグイ飲めてしまいます。さっぱりしているので少し味が濃いめの料理にも相性抜群。
おすすめ⑦:【泉佐野ブルーイング】小麦ラガー
泉佐野ブルーイングの小麦ラガーは、小麦モルトを50%以上使用しており、なめらかな口当たりと爽やかな飲み口が特徴です。
有名料理雑誌の副編集長もこの小麦ラガーを「蕎麦と一緒に合わせたい!」絶賛。
また泉佐野ブルーイングは関西国際空港近くにある工場で、ラベルに関西国際空港の空港コード「KIX」をデザインしています。
>>【泉佐野ブルーイング】小麦ラガー
まとめ
ラガービールは日本のビール文化をつくってきた存在でもあり、居酒屋や家庭でも長く愛され続けているお酒です。
キンキンに冷やして程よいのど越しや飲んだ後の爽快感を楽しむスタイルは、どの時代も変わらず日本人に合った飲み方ではないでしょうか。
大手ビールとの大きな違いは、新鮮でフレッシュな状態のビールが飲めること。醸造所から直送されるできたてのラガーをぜひ試してみてください。
クラフトビールといっても種類が豊富にあり、ホップの苦味や香りがクセになる「IPA」や、コクの深さが日本人に合う「ペールエール」などさまざまです。
売れ筋ランキングでは週間ランキングや、クラフトビールの種類別ランキングが分かり、最近のトレンドが把握できます。
これまで知らなかったクラフトビールに出会え、嬉しい発見ができるはず。
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